作品名:「行雲流水」 [第51回独立書道展]
これも富山(第1回富山展)で皆さんの前で一発で書いた作 出来は良くないがその辺の空気は思い出される(2006年本人談)
福井県の武生市に住んで、大字書を専門にして活躍する土田帆山は、八十四歳で制作意欲は盛んだ。所属する独立書人団では、最高齢の理事を務め、作品の制作は、天衣無縫の破体書となり、自由奔放な姿をここに表している。その例が、今年の第51回独立書展に出品したこの「行雲流水」の作品で、行の字は楷書に近く、雲流水は篆書体を行草意で書くという破体である。
もともと帆山の作品は、行草体を得意とし、その後、金文が流行し始めるとこの造形に、行意、草意を活用して自分の書風を生みだした.初めのころは、形がわりとかっちりしていたが、この作品を見ると、行書や草書に近づく。全体のバランスは、篆書の特色とする方形ではなく、白と線の動き、つまり余白と線のバランスになる。墨は青墨の淡い色で、にじみとかすれの対照の美もある。
問題は、この自由さの組み合わせが、実にユニークだということである。
(文・小野寺啓治氏 アートマインド127号)
淡墨全紙横 70×140cm