「破沙盆」論評[アートマインド2002年11月]
福井県の武生市を本拠にして活躍する土田帆山は、現代派の大字書作家で、漢字の字数を少なく使い、その文字の意味にふさわしい象を、造形的かつ絵画的に表現する象書という運動に参加して、いまその第一線で活躍している。この表現は、戦後新しく生まれ、書を日本人はおろか、世界の人にも視覚的に見て理解される書の美の創造にあり、この提唱者は手島右卿だった.帆山は戦後の書道復興に際して、文部省主催の講習会に参加し、そこで手島右卿に会い師事して、忠実な右卿思想の継承者の一人となり、北陸の地で活躍している。
この禅語の「破沙盆」は、形は篆筆で用筆法は行隷の法も組み合わせ、姿を動的かつ衝動的に表現している.しかも三文字で全体を安定させて構成する姿をとり、書の持つ空間の充実と線の変化による表現を果敢に試みる。この書は、墨色の美しさに、形の安定とリズムに独特の余裕を示し、線のおどけた表情に童心を見せる。
(文・小野寺啓治氏)
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アートマインド2002年11月
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