「鬼神」毎日49[アートマインド 1997.11]
鬼神 (小野寺啓治 論評)
土田帆山が所属する独立書人団は、一九五〇年代に少字数書という新しいジャンルを創造した芸術集団で、その活動は、リーダーの手島右卿を中心にして日本各地に広まり、海外でも紹介されてきた。
帆山は、この独立書人団の創立会員として、福井を中心に活躍し、東京はおろかニューヨークなどで個展を開く活動家である。しかも、師匠の右卿の影響を色濃く受けてきた。この少字数書は、その後一字書となり、さらに昨年から大字書と呼び名は変わったが、右卿の唱えた「文字の意味にふさわしい書を創る」精神は生き続く。
帆山は好んで素材に金文を使い、金文の原形に帆山特有の行草スタイルの線を附与し、「鬼神」の二文字を妖奇的に動きに節をつけて押し進む。構成は上部を横長に安定させ、下部は左右から斜めに支え立つというバランス感覚である。淡墨の効果的なにじみも、原像を明確にする。
「鬼神」第49回毎日書道展
アートマインドNo94. 1997,10月号
出典詳細
アートマインド 1997.11
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