作品名:「仁者壽」 [第56回毎日書道展]
「仁者壽」知者動、陣者靜、知者楽、仁者壽。つまり、仁徳のある人は命が長い、の意。
淡墨の冴えた色輝く美しい横作品である。横に長く伸びた線条と、峻烈な滲みを三箇所に上部を断ち切って、リズムよく配した発想、その造形美学が秀逸である。息の長い練達の書線に魅力があり、仁字の滲んだ縦画の押さえが効いている。(2006年 青木伸一)
悠々と湧き出ている雲のような土田帆山氏の「仁者寿」である。広大な景をみせて、「仁徳ある者は命長し」という、元気でいられることに感謝し、願望を込めて隷書体を基に書いた作品という。
今年の誕生日で八十六歳になるという帆山氏であるが、紙面上部に分厚い墨痕をおいて、紙面を切り取ったようにみせた箇所などは従来の書にはないことで、前衛精神未だ衰えず、下部の線条と空間が際立ち、ねらいが的確であることを感じさせる。書の醍醐味を見事に感じさせてくれているのではないだろうか。
書の美とは何か、書の魅力とは何か、この人の作品をみるとその答えが目の前にあるような気がするから不思議だ。幅広い表現のなかから、書である理由を深く理解している作家なのだろう。ここから育った俊英たちも多いのはうなずけることだ。
一筆一筆に生命をたぎらせ懸命に生きようとしている書家の仕事をみた気がする。(文・花森史朗氏 芸術公論22号)
仁者壽(ジンシャは命ナガシ) 淡墨大画仙連落横 60×180cm